「こんにちはー」
あなたがおじぎをしますと相手の人もおじぎをします。これは何でもない事のようですが、よく考えてみますと他の動物には見られない私たち人間だけの姿です。
私たちは幸いにも万物の霊長たる人間として、この世に生まれ出てこられたのですから幸せに満ちた一生を過ごしたいと考えるのは当たり前のことです。これからお母さんになる人や、いま子育て真っ最中の人にかぎらず、我が子が健康で素直な人に育って欲しいと願わない親はありません。この当たり前の願いこそ皆さんに伝えたい、とても大切な胎教≠フ考え方です。
子どもたちを真心のある優しい人、社会から求められる人格者と言われるような立派な人に育て上げるにはどのようにすればよいのでしょうか。一般的に人間の性格や感性が形成されていくのは、生後の環境や教育によると言われます。もちろん、そのことも大変重要なのですが、もっと重要なことは妊娠時期におなかの中で受けるお母さんからの心の教え、つまり胎教にあるのです。
現代では産まれた赤ちゃんを0歳児と呼びますが、以前、日本では数え年といって産まれた時点で一歳とされていました。このことは、この世に生命≠受けた時から約二八〇日間は、お母さんのおなかの中で肉体が日々成長していくとともに、人間の基本となる心≠熏潤Xと創られている時間の意味でもあるのです。
これまで教えられている胎教の殆どは医学的、肉体的な面から母体の栄養バランスや衛生管理の説明に重点が置かれており、胎児の心≠創り育てていくのは両親、特に母親の精神だという一番大切なことを教えていませんでした。
そこで、原田祖岳老師が提唱された「最も大切な、精神的な問題を取り上げた胎教」の普及に御尽力された野田三郎先生のお話を一人でも多くのお母さんたちに伝えたいとの思いで、大阪府泉佐野市の野出えい様、千葉県市川市の落合富貴子様により、冊子『人創りにはまず胎教を』が配布されてきました。
いま、皆さんのお手元にありますこの冊子は、先達のお気持ちを引き継いでいこうと『人創りにはまず胎教を』を編纂した上で再版された改訂版となります。
原本の内容を大事にして判りやすく書き直していますが、どうしても仏教的表現でお伝えしたい部分もあり、難解と感じられたときには、後で幾度となく読み返していただきますと、きっとご理解いただけると思います。
【追記】
昭和、とくに戦前のお母さんたちはこの本に書かれたような胎教を女の子にはそれとなく話していたように思います。現代のお母さんたちはどうでしょうか?
是非、この胎教を実践していただき、健康な赤ちゃんが産まれて立派な人間に育っていただきたいと思います。熱心にこの教えを伝えられてこられた多くの方々に感謝申し上げるとともに、これからの世代を担う方々への助言となれば幸いです。
ご希望の方には、この冊子をお分けいたしておりますのでご連絡下さい。
1.人創りはまず胎教から
世の中には天才≠ニ呼ばれる人がいますが、天才には後天的と先天的とがあって、後天的天才とは、本人の熱烈な希望とたゆまぬ努力によって現れるもので、これは誰でもなれるというものではありません。
一方、先天的天才とは、両親の熱烈な希望と、おなかにいるときからの胎教が実って出現するもので、迅速且つ確実な結果を現します。
天才とは、運良く天から才を授かるものではなく、すべて人為的なものです。例えば、サーカスを仕事にする夫婦などの場合、親の希望と行動と、無意識に行われている胎教によって生まれて来た子どもは、その胎教で培われた才能に加えて日常の訓練が積み重なって、幼い頃から常人の及ばぬアクロバットをする事ができます。また、親子代々、音楽家と言う家庭のもとには、同じように両親の希望と、胎教とによって音楽関係の天才が現れるという実例が多く見られます。
この胎教というのは、精神的なものであって妊婦さんが無意識のうちに行なっている事もあり、日常の生活がすべて胎教となって影響しているのです。数多くの天才たちが生まれましたが、これは親の生活環境からくる胎教によるものなのです。
幼少の時から、その秀れた特徴が現れると、人は生まれながらの天才といいますが、よく考えてみれば、精神面、肉体面のすべては、胎教によるところの人為的なものといえます。医学界では遺伝として説明されてしまいますが、それだけではありません。もし遺伝因子だけが原因とするなら、両親に似ない子どもは何故できるのでしょう。突然変異などとして説明がされているようですが、最も大切な胎教の影響については殆んど語られていません。
また、伝えられている多くの偉人たちはその父母の徳によって立派に生まれました。摩耶夫人やマリアの存在なくしては、釈迦もキリストも生まれてこなかったでしょう。『母正しければその子も亦正し』とは、世間でも知られた言葉です。良い子が欲しいと願った時に、すでに親の心は正しくなっています。知ると知らずにかかわらず、人類の子どもたちは胎教によって大きく左右されているのです。
もし、あなたにお子様が二人以上いるのなら、それぞれに異なった性格を見て、その子どもを宿した頃のあなたの心持ちと行ないなどを振り返ってみてください。その時々の、両親の人格、生活、環境のすべてが影響していることに気づくでしょう。そして、そのことで親の精神が胎児の精神を創るうえで、とても大事なことかがよくお判りできると思います。『子は親の鏡なり』です。
大切な学問と心の両輪
胎教の影響は、小学校に入学する頃までは特に強く現れます。もちろん、それ以後も父母の精神は潜在的にすべて受け継がれていきます。したがって、胎教を受けた子どもと受けない子どもでは、乳児期、幼児期の育て易さはもちろん、小学校時代から優劣がハッキリしてきます。胎教を受けた子どもは素直で、頭脳や肉体的にも健康で、将来どのような試練や困難にも堪えていける、強い立派な人間になるのは確実です。このことは胎教を信じて行なってこそ実証されるのです。
教育ママ≠ニ言われる親たちは教育のあり方に対する根本的な考えがしっかりしていない間違った姿です。正しい教育とは学問と心の勉強という両輪のバランスが大切です。学問は大いにしなければなりませんが、何のために学ぶのかという根本を知ることが心の勉強です。そのことにより、どのような場合にも動ずる事なく、大いに学び、大いに遊び、のびのびと心身共に健やかに成長するに間違いありません。
そして、一人一人違う子どもの性質に応じて、その子の能力を充分に発揮できるように導いていかなければなりません。
難しい説明になってしまいますが、仏法でいう「中道実相」のこころで、どちらも認めつつ、どちらにも偏らない対応をすることです。そうすることで子供をノイローゼに追い込む事もなく、また野放図にする事もありません。ともあれ、子どもが、将来しっかりした心をもって、世の中のために尽くす事ができるようになれば良いのです。大人が無理やり押し込んだ学問や知識が、子どもが成長していく上でどれ程の役目を果たしている事でしょうか。他人と共に成長してゆく思いやりのある協調性をもった広い心の人になって欲しいものです。伸びる才能は、伸ばしてやりたいと思う気持ちと同時に、根本の心をしっかりと掴んで成長していただきたいと思います。そのような親の気持ちや願いがすべて子どもの心を創っているのです。
では、その胎教とは、どのように行なえば良いのでしょうか。これから述べる具体的な胎教方法を学んで、素晴らしい子どもを育てる、素晴らしい親として是非、実践してみてください。
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2.胎教の具体的方法
これから胎教を勉強して、実践しようと努力することが大切なのは言うまでもありませんが、住んでいる環境や、お仕事、また家族構成などで思ったようにできない場合もあるかもしれません。そんなときにはあまりこだわらずに、自分の置かれた環境のなかで、できる範囲で努力するようにしましょう。
また、ご家族やお友達など、妊婦さんの周囲の方々は協力を惜しまずに胎教の環境作りをお願いいたします。そして妊婦の方は周りの人に、ていねいに協力をお願いするのは良いのですが、「是非、こうしてください」と強要してはいけません。
心穏やかに話し合う事が大切で、他人に強要する事は、自分さえよければ良いという身勝手、わがままになるからです。そのような日常の一挙手一投足、心に思う事すべてが胎教となって、おなかの子どもに影響することをしっかり自覚してください。
胎教の消極的方法と積極的方法
私たちは社会から無尽とも言える大量の情報を取り込んで生活していますが、その様々な情報の中から清らかなものを選ぶようにしましょう。これから具体的に胎教の方法を、
イ.消極的対策
ロ.積極的努力 として説明していきます。
ただし、極端に神経質にならないで、できるだけ心がけるようにしましょう。あなたがストレスを感じることはおなかの赤ちゃんにもストレスとして常に伝わっているのですから。
【視覚】
イ. 悪いもの、不快、不安に思うものは見ないこと。火事、変死体、映画やテレビの残酷な場面など、悲惨なものは見ないようにしましょう。
もし、お仕事の関係でそのような状況に向き合うときは、自分は社会に必要とされる立派な職業に就いているのだという自覚をもって臨んでください。
また、色彩は心に大きく影響して感情にも直接訴えますから、不調和で不快な色使いとか強烈な色は避けるようにしましょう。
ロ. 昇る朝陽や没む夕陽を見るときは、その爽快さ、雄大さを感動の心で眺めれば、心の広いノビノビした子どもができるでしょう。同じように、海、山脈、河なども感情を豊かに眺めてください。
あなたの生活の場が、都会だったり、狭い部屋などで周囲に大きな景色が見られなくても、あくせくしないで、一日に一度は大きな気持ちを持つように心がけましょう。夜空を見上げて月や星を見るだけでも良いのです。あなたが草花を見て、花の可憐さ、美しさを感じる時、同じようにおなかの子どもも、その可憐さ、美しさをしっかりと感じています。
観音像や菩薩像、キリスト像、マリア像など己を捨てて人類の為に尽した偉大な人格者の像や絵を眺めることは、その人格のエッセンスを頂くことになりますから、大変お勧めするものです。
【聴覚】
イ. 音楽による精神的な影響も大きいものです。暗い悲しい低俗な曲は避け、明るく楽しい曲を聴きましょう。耳障りな音、軋む音、叫び声や大声、騒音も避けましょう。ただし、外出先での避けられない都会の騒音などは、その必要性を認めて、むしろ、躍動している現代社会に感謝する気持ちに変えるようにしてみましょう。また、悪口や低俗な噂は自分他人に関わらず一切聞かないようにしてください。たとえ耳に入っても気にしないで早く忘れることです。
ロ. ある時は妙なる松風に心を澄まし、またある時はドーンと岩を打つ勇ましい波の音を聞きましょう。秋の夜に聞く情緒ある虫の音は心情に触れるものがあり、胎児にも良い感性を与えます。またサラサラと風に鳴る竹林の葉の音を聞いたときは、サラサラと執着を捨て、サラリとした心境になれるでしょう。
また、音楽はストレートな感情の表現ですから、よく選んで情操を養いましょう。例えば、メンデルスゾーンの無言歌のようなやさしい曲や苦しみを乗り越えて全身全霊で作曲した不屈のベートーヴェンは、どれ程多くの人々に生きる力を与えてきたでしょうか。それらの感動は、その生涯を貫く精神が今なお私たちに伝わって来るからです。洋の東西を問わず、高尚な音楽を聴いて、豊かな情操を養うのは良いことです。さらに、機会があれば、尊敬する人の話や徳のある人の講演などを聴いて、その人格を耳から頂戴するのもよいことです。
【嗅覚】
イ. 嫌悪を感じるような臭いや、強い香水などの極端な香りは遠ざけましょう。
もし、住まいの周辺環境が悪臭のする所だった場合は、どうすればよいのでしょうか。
まず考えることは、なぜそのような所に生活しなければならないかという因縁≠知ることですが、どうしても悪い環境の中で生活しなければならない以上は、毎日を厭だ、嫌だ、つらい、と愚痴をこぼさないで生活しましょう。生まれてくる子どものためにも、むしろ、その悪因を善因に変えてゆくチャンスと考えて、今の苦しみを甘受するくらいの気持ちに切り替えてみましょう。心に恨みを持ちながらの生活と感謝しながらの生活とでは大違いです。そうする事により、悪環境でも心身共に爽やかに過ごす事ができるのです。この目に見えない心の動きが大きく影響して、人智では計り知ることのできない結果になっていくのです。
ロ. ほのかに漂う好い香りは、心を落ちつかせてくれます。熱帯産の常縁樹から取る丁子などのお香や、最近では心をリラックスさせるラベンダーやユズなどのアロマも普及していますから生活空間にお好みの香りを取り入れて楽しむことも良いでしょう。
【口】
イ. 悪口や心にもないお世辞や、他人の批判を言ってはいけません。どんな理由があっても人を批判するのは正しい心の持ち方ではありません。つい、うっかりでも口にしないようにいつも心がけていましょう。
ロ. 生命の根源となる食事を頂くことは聖なる喜びとしてください。いつもの食事と軽く思わないで、常に感謝の気持ちを持ちながらいただきましょう。特に食べ物の好き嫌いをしないことです。心から感謝しながら食べる気持ちは胎児にも伝わりますから、好き嫌いの無い、一生食べ物に不自由しない人間になるでしょう。また、食事に感謝することで何を食べても良く消化するようになります。
女性は自分で調理することが多いので料理への感謝が足りなくなりやすいものです。自分で作った食事だと思うのは浅い考えで、葱一本でも太陽、水、土などの恵みを受けておいしい食材に育ったのです。農家の方々は、その生育の手伝いをされたのです。そして、店頭に並ぶ商品を買うということは、流通に携わった方々の労力に対してお金を支払っているということです。
また、料理に使用する食材も、道具も、熱もすべては大自然から造られたものなのです。僅かでも無駄にしないで自然に感謝して頂きましょう。
このように、精神界も物質界も、すべて相重なって尽きるところがない関係性を仏教では「重々無尽」といいます。
また、食事の量は妊婦と胎児のその時々の状況に応じて腹八分目にとどめ、食前食後には落ち着いた静かな時間を少しでも持つようにしましょう。周囲の人は協力してそのような環境をつくってください。
ご主人が仕事などで遅くなるときも感謝の気持ちで待つことが胎教となります。その気持ちが伝わり、ご主人からは感謝の念を持って「遅くなるから、先に食べていいよ。」という妻への思いやりの言葉になるでしょう。これが真の夫婦の姿だと言えます。つまり、同時に夫婦で真の胎教を実行している事になるのです。
どうしても、静かな環境で食事ができない時などは、やはりその事にあまりこだわらずに状況を受け入れて感謝の気持で心静かに食事をしましょう。食後は愉快な語らいをして、あくせくしないことです。
また、料理は見た目にも美しく、切り方にも心を配りましょう。欠けた食器などを使うと、それを見るたびに心のどこかで、嫌だと感じる気持ちが胎児にも伝わります。口に触れるものは、高価でなくとも清潔であるように心がけてください。胎児もきっとそれを感じます。
これまで説明したことをまとめますと、正しさの基準となる「宇宙の真理」に基づいた生き方をしましょう≠ニいうことです。これらは、何も難しいことではありません。日常の中でちょっとした心がけでできるものばかりです。規則正しい、清い生活を心がけ、毎日をサラリとした心境で暮らしましょう。
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